★以下、
「本質力」についての私の理解と考え方(6)
の続きです。
ベネッセ退職後約1年の修業期間を経て、
2003年9月に聖蹟桜ヶ丘ゆる体操教室を、
2004年2月に神楽坂ゆる体操教室を開校
した私ですが、
これらのゆる体操教室に加え、いつか自分の手
で、小学生を対象とした、自分が理想と考える
「学びの場」
を作りたいという夢を持っていました。
そうです。
ベネッセ在職中に「やる気アップシステムPJ」
を通して考え、思い描いていた理想、
ゆる体操との出会いを通して得た新たな考えや方法、
さらには、自分自身が青年期に空手を通して得た、
有形無形の様々な「学び」
・・・これら全ての集大成とも言える、
自分が考え、実現できうる限りの最高な
「学びの場」です。
その夢が具体的な形になりはじめるまでには
かなりの時間を要しましたが、
2018年2月にようやく教室の開校まで漕
ぎつけることができました。
教室名は
「今はゆったり、じっくり成長して、
やがて、本物になることを目指そう!」
という思いを込めた
「神楽坂悠真塾」。
そして、教室のキャッチコピーは
「運動と勉強で、
小学生の“根本のチカラ”を育てる」
としました。
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悠真塾の教育理論は、
以下にリンク先を添付した2つの図を
見るとよくご理解いただけることと思います。
A)「比の問題」を解くための能力の
構造モデル図
https://photos.app.goo.gl/q9tn9ESQAyC3M3kD9
B)「日常」と「悠真塾のプログラム」で
“根本のチカラ”を育てるイメージ図
https://photos.app.goo.gl/Za89ciJVuydZJbjh7
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A)の図は、小学校高学年で習う、
算数の「比の問題」を例に、その能力の構造を
図式化したものです。
この能力を支える構造を、もっとも根本的・
本質的な下部構造から最も具体的な上部
構造まで、階層分けをする形で整理してい
ます。
この能力におけるもっとも下部階層に位置づ
けられる能力は、「身体能力」と、「軸(センター)」
を始めとした「身体意識能力」です。
そしてその次の階層に位置づけられるのが、
「意欲」「集中力」「忍耐力」・・・等々の能力。
これは私が「やる気アップシステムPJ」で
主に研究対象としていた能力で、今日使われ
ている言葉で言う「非認知能力」です。
因みに下部階層を支えるこれら2つの能力は、
全く異なる能力、例えば
「サッカーにおける“シュート力”」
という能力の構造を分析整理したとしても
同様に、最下部の階層に位置づけられます。
話を「比の問題を解く力」に戻します。
最下部から数えた3段目の階層からは「勉強」
に関わる能力構造に入ります。
3段目は「読解力」「数的処理能力」など、
学習分野における根本能力の階層で、
俗にいう
「地頭」
と呼ばれる能力は、この階層の能力として当
てはめることができます。
悠真塾が提唱する「根本のチカラ」とは、この
「地頭」を含んだ、3段目の階層までの能力を
指しています。
因みに私が取り組んでいた武道派伝統空手
において重視されていた「地力」という概念は、
仮に空手の能力をこの構造モデル図に整理
した場合、この「地頭」と同じ階層に位置づけ
られるものと考えられます。
そして、4段目~6段目の階層について。
ここはより具体的な「算数の学力」における
能力構造を階層分けしたものです。
(この部分については、算数教育の専門家の
方等が厳密に分析した際に異論が出るかも
知れませんが、あくまでもひとつのイメージ
として捉えていただけますと幸いです。)
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これまでこの連載を通じ、いくつかの分野の
具体例を通してお話をし
また、この構造図にも表現されているように、
より下位階層に位置づけられる「本質力」を
高めることが、あらゆる「具体力」を下支え
することにつながります。
だから、「急がば回れ」の言葉の通り、じっ
くりと時間をかけて「本質力」を高め、
さらに下位階層から上位階層に向け、
本質力から具体力につながる階段を順番に
一段一段登っていくように学習を進める方が
より効果的・効率的で、必要な学習時間もず
っと少なくて済むようになります。
これは、私が空手を通して経験したことと全く
同じで、悠真塾での指導を通してそのことが
子どもの教育に関しても全く同様であることに
対して、私は強い確信を持てるようになりまし
た。
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一方、この構造図における、より上位階層の
「具体力」に位置づけられる取組みを通して、
下位階層の「本質力」が育つという、
「上から下への流れ」
というのももちろん当たり前に存在します。
例えば、
「計算練習を通して集中力や忍耐力が身につ
いた」
さらには
「軸が育った」
という現象です。
ただ、この「上から下の流れ」が成立するには
大前提があり、それは、取り組む本人がその
対象に対して
「強い意欲をもって打ち込んでいる」
状態にある、ということです。
では、「意欲をもって打ち込む」ことができる子
には何があるかと言えば、それがまた「本質力」
であり、結局この部分の能力を高めることは避
けて通ることができないと言うことができます。
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では、この「本質力」をどのように育てるのか?
そのイメージを表現したのがB)の図です。
この図は、悠真塾開校当初に提供していた
「ゆる体操」・「ゆるスタディ」(30分のゆる体操と
1時間の自主学習を組み合わせたプログラム)・
「空手」・「自習タイム」の4つのプログラム
を通して心身の「軸」が育つ“とっかかり”を作り、
その上で日常生活における様々な具体的活動
に取り組むことで、
子どもたちが日常の活動を通して少しずつ、
自身の「軸」を生かし、そのスケールを大きなも
のに育てていく・・・というイメージを表現した
ものです。
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子どもの「本質力」を育てる最も有効な方法
は、日常生活で直面するひとつひとつの
出来事に対して
「夢中になって打ち込む」
ことです。
「全てのことに夢中になる」ということは現実
的には難しいかもしれませんので、
「夢中になって打ち込める対象を増やす」
「何かに夢中になって打ち込んでいる時間
を増やす」
と言い換えても良いかもしれません。
これもすでにお話をした通り、人が何かに夢中
になって打ち込んでいる時は必ず、心身の「軸」
を始めとしたすぐれた身体意識が発動しています。
だから「夢中になって打ち込む」ということ自体
が本質力養成のための実戦トレーニングにな
っているのです。
ここで大切なことは
「様々な対象に取り組む」
ことではなく、あくまでも
「夢中になって打ち込む」
ことです。
物事に対して、そのように意欲的に取り組め
るかどうかには個人差があり、これもまた
「能力の差」ということになりますが、
その、通常「ブラックボックス」となっている
能力を、運動を通して身体意識を刺激する
働きかけを行い、日常の中で優れた身体意識
が発動しやすい回路を作っていくことによって
開発するのが「ゆる体操」の狙い・役割です。
因みに、
「子どもに色々な経験を積ませてあげたい」
という思いから、幼少期から習い事を10個以上
掛け持ちさせる・・・といった親御様もおられます
が、子どもが本当に心から「やりたい」と思って
取り組むことでない限りそれらから本質力を育
てる高い効果は期待できず、逆に、
「自分の意志で物事に取り組む」
という自発的な意欲を削ぐことにつながるなど、
大きな弊害も懸念されます。
これは私の「印象」に基づいた話になってし
まうかも知れませんが、
子どもが意欲をもって取り組み、後に「本質力」
につながりやすいこととは、
大人がお膳立てをして作られた、「プログラム」
や「アクティビティ」よりもむしろ、
「家にあった割りばしを集めて工作をしてみ
た」
「公園で、アゲハチョウの幼虫が葉っぱを食べて
いる様子を時間を忘れてずっと見ていた」
といった、日常で出会う様々な「些細なできごと」
の中にある場合が多いような気がします。
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2018年の開校後、こうした教育理論に基づ
いた指導をスタートさせた悠真塾ですが、
やがて小学生の教育現場を覆う巨大な「厚い壁」
の存在に直面します。
それが、現在空前の大ブームとも言われている
「中学受験」です。
いや、「厚い壁」となっているのは、「中学受験」そ
のものではなく、大手進学塾が中心となって既に
確固たる存在として形作られている
「中学受験文化」の価値観
といった方が、より正確かも知れません。
大手進学塾は、事業者としての目的である
“利益の最大化”を追求するため
「中学受験において、できるだけ難関校・
最難関校と呼ばれる偏差値の高い中学に
多くの受講生を合格させる」
という1点をゴールに据え、
自社の立場から見てもっとも効率的な手法を
用いてそのゴールを追求します。
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その手法とは、入試問題を分析・パターン化
して作り上げた教材を使った「徹底反復」です。
私がこれまでに語ってきた
「本質から積み上げる」
考え方とはまさに真逆の、この連載の前半で
ご紹介した「競技派伝統空手」の発想に通じる
方法です。
子供に対しては膨大な勉強時間を強いる一方、
塾側が指導に費やす人的パワー・コストは最も
省力化できる方法とも言えます。
「最難関」中学受験を目指す小学生の中には
平日には「学年の数×1時間」、
休日には10時間近くを勉強に費やす小学生も
多いと聞きますが、
そのような膨大な時間的・精神的(さらには
経済的)コストをかけた取り組みに対して、
それが「真の思考力」といった、より本質的な
能力の育成につながるリターンがあまり期待
できない方法である、と言うこともできます。
この「大手進学塾モデル」の中学受験勉強に
取り組むことにより、
多くの小学生とその親が多大なストレスを抱え
ることを余儀なくされるなど、様々な問題が生
じているのですが、
そんな中でも「親が子どもの幸せを願う」強い
エネルギーの主だった「受け皿」として大手進
学塾が選ばれ、その価値観と方法論に従って
多くの子どもと親が小学生時代における多くの
時間を過ごす、という構造が現在に至るまで
盤石なものとなっています。
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私はこの状況に対して強い問題意識を抱き、
悠真塾のプログラム内容を一旦オンライン
での運動指導のみに縮小させ、一方で自身
の子どもたちを対象に上記の理論に基づい
た学習指導を行い、その是非を確認するとと
もに具体的な方法論を詰めていく「研究期間」
を設けました。
現在、この研究期間の最終段階に近づいてい
ますが、この成果を元に、
小学生の教育を、
より本質的な考え方・方法に基づき
「子ども自身の幸福な人生」
と
「より良い社会」
を実現させる方向に照準を合わせ、
それを強力に具現化していく力を持った
内容に変えていくための実践・発信活動
を今後更に強化していきたいと考えてい
ます。
(第7回 了)
