「本質力」についての私の理解と考え方(6)

★以下、
「本質力」についての私の理解と考え方(5)
の続きです。

例えば「ゆる」の考え方について。

その頃私は既に空手を通して「自分には、
“ゆるむ”ことが欠けている」という自己認識
をもっていました。

そのことを最初に意識したのは大学3年生の
時の、千葉県勝浦市で行われた大学の合同
合宿でのことで、そのアドバイスをしてくださっ
たのは、現在、伝統空手の指導者として、
また、映画「黒帯」の主人公として世界的に
有名な中達也先生でした。

指導員の先生が元立ちになり、学生一人一人
の技を受ける「打ち込み稽古」の中で先生は

「お前、(技が)はやいんだから
もっと力を抜けよ・・・」

と声をかけてくださりました。
(先生と私の年齢差は3歳と近く、当時指導員
1年目だった先生は後輩にアドバイスをする
ように、気さくに声をかけてくださりました)

「もっと力を抜け」

・・・ゆる体操の実践者に限らず、「脱力」の
重要性が一般にもかなり広まっている現在
であればさほど特別なアドバイスに聞こえ
ないかもしれませんが、今から約40年前の
空手の指導の現場で受けたこの言葉はと
ても新鮮でした。

ただ、「力を抜くことが大事」ということを知っ
ても、それを実際にできるようになるまでが
果てしなく遠い道のりで、「力を抜いて」試合
に臨んだつもりが「気を抜く」ことにつながっ
てしまい、完全に格下とみられる相手にあっ
さり負けてしまった・・・といった失敗もあり
ました。

25歳の時には、たまたま会社から派遣され
た外部研修を通し、脳の「α波」の研究や、
その作用を生かしたメンタルトレーニング指
導の分野での第一人者である志賀一雅先生
から直接指導を受ける機会も得ています。

そんな、問題意識や下地を持った上での
「ゆる」との出会いでしたが、自ら実践してみ
て、これまでに経験したことのない効果を実感
することができました。

それは一つには、脳内イメージを通した脱力
を主体とした

「スタティック〈静的な〉リラクゼーション法」

より、
全身の運動を通して脱力を促す

「ダイナミック(動的な)リラクゼーション法」

である「ゆる体操」の方が私に向いていた、
ということもあるかもしれません。

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また、高岡先生が創始された運動科学の理論
の核心部分のひとつである「身体意識」の考え
方にも、大きな魅力と可能性を感じました。

当時32歳になっていた私の、空手修行におけ
る大きな問題意識は、

「年を重ねるごとに上達し、強くなる・・・」

という、昔の武道・武術の達人の世界の実現は
本当に可能なのか?

ということです。

その問いに対して、加齢によって生理学的な
老いや衰えは免れないとして、その分を身体
意識能力の上達によって相殺させ、さらには
それ以上の上乗せをすることにより、年齢を
重ねながらもパフォーマンスを高めることは
可能である、という「仮説」を得ることができま
した。

ただしこれは「”理論とリアリティ”両面から
のアプローチを通して真実を探求する」スタンス
の私にとってはあくまでも「仮説」です。

その「リアリティの探求」とは、自分の身体を
土台とした生涯をかけた実験となります。
しかしこれはまた同時に、結果に対して非常
に期待がもてる、生涯をかけて取り組むのに
値する実験であると私は直感しました。

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こうした運動科学の理論は、私が当初対象と
考えていた空手の上達の観点のみでなく、
「やる気アップシステムPJ」で探求していた

「人間力を育てる理論と方法の確立」

にも、非常に有力な示唆を与えてくれました。

前述した「やる気の5ステップ理論」に運動科学
の理論を当てはめると以下のようなことが考えら
れます。

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心身に強い「軸」が形成されている人間は、
自分が何かの課題を与えられた場合、自分の軸
をその対象の軸(中心・本質)と合わせ、まっすぐ
に取り組みます。

これを運動科学の理論では「センターToセンター」
と呼びますが、一般に言われる

「何事も、素直な人間が一番伸びる」

といった教えがこれに当てはまると考えられ
ます。

またその取り組みは、対象の中心(本質)を
どんどん探究する方向に進みます。

子どもの勉強であれば、

「なぜそうなるのか?」

という問いをどんどん深めていくことが
それにあたります。

そして本質を追求すればするほど「面白さ」を
知り、やる気が高まっていきます。

心身の「軸」が通ると、気の循環が生まれます。
それが何かに取り組む活力・エネルギーの素と
なるのですが、その「軸」は何かに真剣に打ち込
む体験をすることで更に鍛えられ、スケールを大
きくさせていきます。

そして、軸のスケールが大きくなればなるほど、
その人のもつエネルギーのポテンシャル量が上
がっていきます。

また、物事に対して熱い情熱をもって取り組む
装置となる「中丹田」や、忍耐力につながる
「下丹田」、立ちはだかる数々の障害をものと
もせず物事をやりきる突破力につながる
「裏転子」、また、具体的な人に対しても抽象的
な課題に対しても、親和的な関係性を取り結び、
広く様々な対象に対して興味関心をもつことに
つながる「リバース」等々、他の身体意識が次々
に発動しはじめ、日常生活における様々な課題
への取り組みを通してどんどん規模と質を上げ、
その成長した身体意識をもって、日常の現実世
界で更に高度な課題に取り組めるようになる、
といった「良循環」ができあがる

・・・ これが理想的なメカニズムで、このサイ
クルに入るための大変有効な方法が、
「ゆる体操」によって「軸」をはじめとした身体意
識を継続的に鍛えることで、日常生活で様々な
課題に直面した時にそれらの身体意識を使う
準備を整えておくことである、と考えることが
できます。

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以上のような

「空手の上達」
「人間力を育てる教育理論・メソッドの確立」

という2つの課題に加え、

「自身の抱える健康問題の克服」

という課題を当時の私は抱えていましたが、
それらすべてを解決させ、その後の人生へ
の道を切り開いてくれる存在が高岡英夫先
生の作られた運動科学の理論であり、
「ゆる体操」であるということに気付いた私は、
人生をかけてこの道に取り組むことを決意し、
2002年9月末、12年半勤務したベネッセ
コーポレーションを退職しました。

(第6回 了)

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