明日、2月14日は「神楽坂ゆる体操教室」
開校8周年の記念日です。
毎年この時期になると、開校初日のことを
思い出します。
8年前の2月14日は、土曜日でした。
オープン記念のセレモニーもお祝いの花輪も、
ありません。
それどころかレッスンの予約も、1件も入っ
ていません。
この日の朝に、ごく簡単な教室の内装工事が完了
し、そのまま自動的に「オープン」となりました。
「神楽坂ゆる体操教室」の看板がビル1階の
壁面に掲げられると、前を通る人の波が一斉に
「何だろう?」と目をやりました。
不思議なことに、その視線は看板ではなく、自
分に向けられているように感じられ、私は大勢の
観客の視線が注がれた 舞台の上に突然引っ張り
出されたような感覚に襲われました。
一瞬、怯みそうになった気持ちを下腹に落とすと、
今度は静かにじわじわと、気力が湧いてきました。
「よし、やるぞ・・・」
当時はまだ、「ゆる体操」という名前も世間で
は殆ど知られてい ませんでしたし、実際に
ゆる体操の指導活動を行っている指導員も全国で
数名いる程度。
そんな中で、本格的な「ゆる体操専門スタジオ」
を開業してしまった訳ですから、
冷静に考えれば相当に不安な状況です。
「ゆるめることが大事、という考え方を理解して
くれる人がどれくらいいるのだろうか?」
「そもそも、“体操”を、お金を払ってまでやり
たいと思ってくれるものなのだろうか?」
・・・ 8年前は世の中の「体」や「健康」に対
しての関心も、今よりずっと低い時代でしたから、
こんな基本的な部分から、
「やってみなければわからない」状態でした。
だから当時の私は、努めて考えることをやめ、
心の中に不安な 気持ちが浮かび上がってきそう
になったら、ひたすら「ゆる」のトレーニングを
するようにしていました。
ともあれ、見込み生徒数ゼロで、
初日はスタートしました。
当時の土曜日のレッスンスケジュールは
・ 10:30〜11:40
・ 13:30〜14:40
・ 15:00〜16:10
・ 16:30〜17:40
の計4コマ。
生徒さんがいないので、教室の中でひとり、
ただひたすらトレーニングを繰り返しました。
それは、レッスンのウォーミングアップであ
るとともに、不安な気持ちに打ち勝つための
トレーニングでもあります。
10:30クラス。誰も来ず。
13:30クラス。やっぱり誰も来ず。
15:00クラス。 もちろん誰も来ず。
・・・ この頃になると自主トレにかなり深
く没頭し始め、すっかり、今が教室のレッスン
の時間で、たまたま生徒さんがどなたもいら
っしゃらないから自主トレをしている、
という目下の状況すら、忘れてしまっていまし
た。
時間が経つのも忘れ、外が暗くなってきたのに
も気付かず、内装が完了したばかりの
「自分の教室」でひとり、ゆるんだ幸せ感に浸り
ながらトレーニングに打ち込んでいると、
教室の入り口にひとりの女性が立っていること
に気付きました。
「たまたま下を通りかかったら看板を見つけて
・・・。 体験をさせていただけませんか?」
この方が、記念すべき、神楽坂ゆる体操教室
の生徒さん第1号となりました。
記入していただいた入会用紙の右端に書い
た会員番号は「K1」。
「K」は神楽坂のKです。
イチロー選手が初めてメジャーリーグの公式戦
に出場し、最終第4打席でようやく初ヒットを
打てた時のことに触れ、
「あの1本が出るのと出ないのとは大きな違い。
あの1本が出たこと で、アメリカでやってい
ける気持ちが湧いた」
といったコメントをしていたのを見たことが
ありますが、
私があの日に味わった気持ちは、この言葉にと
ても近かったような気がします。
あの日、「K1」でスタートした会員番号
は現在、「K736」まで進んでいます。
この数字が、必ずしも私の仕事の生み出した
価値の大きさを示す訳ではないのですが、
8年間でこれだけの方々が「ゆるむ」ことの
大切さを理解して下さり、この教室で一緒に
体操に取り組んで来て下さったことを考えると、
とても感慨深い数字でもあります。
そして自然と、一人ひとりの皆さんへの感謝
の気持ちが湧いてきます。
8年前のあの日の「やるぞ!」という思い。
ひょこっと体験に来られた「K1」さんとの
レッスンを終えた時、つくづく感じた
「生徒さんの存在」のありがたさ。
・・・ ここでもう一度深く味わって、
9年目に臨みます。
私の、これまでの人生で一番思い出深い、
2月14日のお話しでした。
お付き合い、誠にありがとうございます。
では、今日はこんなところで。
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